お寺にお参りして英語を学ぼう(富山・瑞龍寺)

日本を学べる英語の表現

富山県高岡市にある曹洞宗の瑞龍寺さんに行って参りました。 

京都や鎌倉には規模も寺格も日本で有数といえる臨済宗のお寺はたくさんありますが、曹洞宗で規模の大きなお寺はなかなかありません。

関西の華やかさを併せ持つ禅寺とは違った北陸の質実剛健な禅寺の空気に自然と心も引きしまる思いです。

中国風の禅寺の雰囲気としては京都・宇治にある黄檗宗萬福寺(おうばくしゅうまんぷくじ)さんもよく似た雰囲気があります。

萬福寺さんには関帝廟があるなどより日本でも有数の中国的な空気があるお寺である一方で、瑞龍寺さんは「修行の寺」というオーラが大きく前面に出ています。

加賀百万石 前田家の菩提寺

瑞龍寺さんは加賀藩二代藩主・前田利長の菩提寺で、前田利長の義理の弟(younger brother-in-law)である三代藩主・前田利常により創建されました。

「瑞龍」という寺号も、利長の戒名(posthumous name)である「瑞龍院」からとられています。

加賀百万石といえば秀吉の盟友といえる前田利家が有名です。

しかし豊臣の天下から徳川の支配する江戸時代に入っても、外様大名でありながらこれほどの石高を維持できたのは利長・利常の大きな功績があったからでした。

とくに利常は幕府に目を付けられないようにわざと無能なふりをしながら、一方での領国の経済振興をはかるなど非常に有能な大名でした。

戦乱の時代が終わり武器や甲冑などをつくる仕事が激減していため、職人の救済策として、全国から一流の職人を集め、焼きものや金細工などの高級な工芸品を生産を進めます。

いまでも加賀国であった石川県や富山県には国や県の指定を受けている伝統工芸が多く残っていますが、それも利常の功績といえるでしょう。

瑞龍寺さんの建築も加賀藩のお抱えである大工頭・山上善右衛門嘉広を棟梁となって進められました。

そして瑞龍寺さんの建物も国宝と重要文化財に指定されています。

中国風の七堂伽藍

瑞龍寺さんには中国風の禅宗様式の七堂伽藍(しちどうがらん  seven-structured temple)があります。

そもそも「伽藍 がらん」というのは古代インドの言葉であるサンスクリット語(梵語)で「僧伽藍摩 そうぎゃらんま」がなまった言葉です。

また「僧伽 そうぎゃ」はサンスクリット語では「寄り合い」とか「集まり」を意味する「サンガ samgha」が語源です。 

サッカーチームの京都パープルサンガのチーム名はこれに由来します。

つまり伽藍とはもともと「お坊さんたちが集まって修行をする場」を意味する言葉で、そこから仏教寺院の複合施設や建物をあらわすようになりました。

さらに七堂伽藍というのは「お寺に必要な7つの建物」という意味で、宗派によって建物の種類も異なります。

瑞龍寺さんの伽藍の配置は中国・杭州(Hangzhou)にある径山寺(きんざんじ)をモデルにしたといわれています。

そのせいか北京の紫禁城(Forbidden Palace)など中国によくある左右対称のレイアウトになっています。

中国の禅宗様式で建てられた江戸時代初期の建築として七堂伽藍のおおくの建物が国宝重要文化財に指定されています。

国宝 National Treasure

三門 temple gate

もともと寺は山にあったので山門とも言います。そこから転じての解脱の過程となる「空門」「無相門」「無作門」の「三解脱門」を略して三門になりました。

またこの門の設計は「和算 わさん Japanese mathematics」をつかって左右対称のバランスをとれるように行われています。幾何学的な美しさは数学的な能力を欠けば作り上げることは困難です。

仏殿(ぶつでん)Buddhist hall

ご本尊である釈迦三尊(釈迦如来、文殊菩薩、普賢菩薩)が祀られている伽藍の中心に位置する建物です。

法堂(はっとう)public hall

仏教の講義をする場所です。禅宗以外の宗派では「講堂 lecture hall」と言われることが多いです。

法堂に対しては Dharma hall という英訳をよく見ます。様々な意味を含む「ダルマ Dharma」には「秩序をたもつ」という意味があり、そこから「法」も「ダルマ」の訳の一つになっています。

国の重要文化財 Important Cultural Property

総門(そうもん)main gate

前田家の菩提寺なので、加賀百万石の家柄の格をあらわす設えになっています。

禅堂(ぜんどう)meditation hall
僧堂(そうどう)monk hall

禅堂と僧堂は同じ建物です。座禅だけをする場合は禅堂、それ以外の修行も行う場合は僧堂と呼ばれます。

回廊(かいろう)corridor

北回廊、南東回廊、南西回廊の3つにわけて指定されています。

大茶堂(おおさどう)tea hall

防火(fireproof)のためで土壁で天井が塗られています。これは非常に珍しいようです。

烏枢沙摩明王の御朱印

瑞龍寺で最も古いとされる仏像に「烏蒭沙魔明王 うすさまみょうおう」があります。

「明王 みょうおう」というのは、密教(みっきょう Tantric Buddhism)というヒンズー教(Hinduism)の影響をうけた神秘主義(mysticism)の仏教に登場する仏様になります。

明王は仏教の教えをなかなか受け入れない民衆に教えを厳しい姿勢で伝える如来(にょらい Buddha)の化身(けしん Avatar)とされます。

ちょうど、生徒を大切に思う優しい先生(如来)がやんちゃ坊主を叱りつける厳しい姿勢(明王)によく似ています。

そのため「教令輪身 きょうれいりんしん」と呼ばれます。 

また菩薩はやさしく人々に教えを説くので「正法輪身 しょうぼうりんしん」と呼ばれます。

そしてこの烏枢沙摩明王はインドの火の神の化身 Ucchuṣma が元とされています。

インドの神様は、古代インドに侵入したアーリア人(Aryans)の信仰であるゾロアスター教(Zoroastrianism)の影響で「火を神聖なもの」とする影響を受けているものが多いです。

日本や中国では「浄」という感じが「さんずい」であるように「水に流す」ことで邪気を払います

しかしゾロアスター教のように砂漠で生まれた信仰は「火」をもって邪気を払うのでしょう。

インド出身の明王は「邪気や煩悩を焼き尽くす」ため炎がモチーフな姿が多いのもこのためです。

禅宗のお寺では烏枢沙摩明王では東司(とうす)つまり「トイレの守護神」として祀られていることが多いのは、トイレ(ご不浄)を炎で浄めるためです。

私の実家のトイレにも「おんくろだ なう うんじゃく」と書かれたお札がはってありました。

子供の時は、それがなんのことかわからないまま生きてきたのですが、これが烏枢沙摩明王の真言です。

日本の歴史や文化は日本列島単独の話では完結せず、非常に重層的で中国、インドの歴史や信仰もあわせて学ばないと全体像がつかめません。

日本はシルクロードの東の端で世界とつながっているので、理解が深まれば深まるほど、世界全体とのつながりを意識せざるを得なくなります。

日本の歴史を深く学ぶことで世界全体に視点が移ります。日本に生まれてほんとうによかったと思います。

瑞龍寺に関連する英語表現

禅宗: Zen sect
伽藍配置: temple arrangement
仏壇: altar

altar は「祭壇」という意味で、宗教・信仰に問わず使います。

釈迦如来(しゃかにょらい): Shakamuni

瑞龍寺さんのご本尊。お釈迦さん、そして両脇に文殊さんと普賢さんで「釈迦三尊」となります。

文殊菩薩(もんじゅぼさつ): Manjushri

知恵を司る仏様で獅子に乗っている姿の像で作られていることが多いです。文殊という名前は「マンジュシュリー」の音をそのまま漢字にあてています。

普賢菩薩(ふげんぼさつ): Samantabhadra

文殊様と同じく知恵を司る仏様で像に乗った姿で作られていることが多いです。

サンスクリット語のサマンタバドラは「普く賢い者」の意味で、こちらは音ではなく意味を漢訳して普賢の名前になっています。

江戸幕府: Edo shogunate

朝廷は imperial court です。これは中国の朝廷も同じです。

側室: concubine
墓地: graveyard
廟: mausoleum

故人を偲ぶための大きな建物で墓を内部に備えるものを言います。

先祖: forefather
座禅: meditation training
大庫裏(おおぐり): kitchen

寺院の台所にあたる場所です。「庫裏」は「裏にある倉庫」という意味です。 

格天井(ごうてんじょう): coffered ceiling

格式のある部屋の天井には格子状の装飾がされました。

屏風(びょうぶ): sliding screen
袈裟(けさ): priest robe

語源はサンスクリット語の「茶色やサフランの色染め」を意味する kasaya です。

ちなみにキリスト教の聖職者の上着は surplice といいます。

名工: top-notch artisan

top-notch で「一級品」などという意味になります。notch そのものは「傷跡」のことです。

top-notch の由来は「高跳び競争をしている子供が自分のジャンプの高さを示すために残した傷」から来ているようです。

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