松山城 Matsuyama Castle
愛媛県松山市にある百名城そして現存十二天守の一つである松山城に行って参りました。
松山城と呼ばれる城は日本各地に備中松山城(岡山)などあわせて10もあり、松山城と言えばこの愛媛・道後温泉のすぐ近くにある伊予松山城のことです。
いまだ数多くの城郭の遺構が残っていて戦国期の雰囲気を強く感じることができます。
加藤義明のお城
築城主はかの有名な賤ケ岳の七本槍の一人(one of seven spears men)の加藤嘉明です。
松山城のマスコットキャラクターのゆるキャラは加藤喜明がモデルの「よしあきくん」です。
城の中には加藤嘉明が実際に見つけた甲冑も展示されています。
加藤嘉明は「猛将かつ城作り名人」とよべる武将なのですが、同じタイプだと加藤清正や藤堂高虎という超有名武将がいるためにすこし陰に隠れがちかも・・・。
松山城は堅固な城
一般的な知名度はともかく戦国期に活躍した人物だけあって非常に堅固な城の作りです。
山の上に作られているだけでなく、城郭自体も天主にたどり着くまでに回り道をさせるように仕向けられていたり、いたるところに櫓が設置されていたりと様々な防御策が凝らされています。
天守は遠目には視認できるものの、通路が四人以上が並んで走れないように設計されています。
そうなると進軍する側は壁に囲まれて進まされることになります。
さらにいたるところに櫓があり、全体が覆いかぶさってくるような圧迫感は非常に強く、攻める側の不安感は相当なものと容易に想像できます。
松山城の城郭説明は日本語も英語も充実!!
松山城のパンフレットには国の史跡として重要文化財 Important Cultural Property に指定された21棟の城郭遺構と復興された建造物(restored building structure)がのっています。
その城郭構造の解説が、英語・日本語も非常に詳しく掲載されています!
そこで英語と日本語の解説を併記して紹介します。
英語パンフレットの特徴として日本語そのままの英語に表記されたものは大文字のみで表記されています(例:TENSHU)。

大天守: TENSHU (Main Tower)
天守は「main keep」もよく見ますね。現存十二天主で唯一、築城主として「葵の御紋」が瓦についているのは、松平定行が封じられた際に天守を五重から三重に改修したからでしょうか。
小天守: Small Tower
小天守は大天主とつながっていて「連立式天守」とよばれています。
南隅櫓: South Corner Turret
「turret」 は「射撃を目的とする塔」のことです。語源はラテン語で「塔 tower」を意味する「turris」です。
十間廊下: JIKKEN Corridor
1間(けん)は約1.8メートルで柱の間隔の距離です。英訳では「a room measurement」となっています。
北隅櫓: North Corner Turret

天神櫓: TENJIN Turret
鬼門 demon's gate にあたるため天神様(菅原道真 deified scholar of the 9th century)を祀ってある櫓です。鬼門封じが目的なので、軍事目的ではない珍しい櫓とのこと。
筋鉄門: SUJIGANE (Iron) Gate
中庭 inner court の防衛のための門です。
一ノ門: ICHI-NO (The First) MON Gate
紫竹門: SHICHIKU (Bamboo) MON Gate
紫竹は中国・台湾原産の竹の一種です。
乾櫓: INUI (Northwest) Turret
北西は方角を十二支で表した「戌亥 いぬい」の方向で「乾」です。
乾門: INUI (Northwest) MON Gate
乾門東続櫓: East Connecting Turret of INUI-MON Gate
連絡橋のことを「connecting bridge」といいます。コネクトは日本語になりつつありますが「建物同士をつなぐ」の意味でも使えます。

野原櫓: NOHARA Turret
日本で唯一現存する望楼型二重櫓で、天守の原型といわれているそうです。松山城で一番古い構造物(the oldest structure in Matsuyama Castle)です。
艮門: USHITORA (Northeast) Gate
北東は方角を十二支で表した「丑寅 うしとら」の方向で「艮」です。鬼門にあたるため「不浄門」とも呼ばれているとのこと。
艮門続東櫓: East Connecting Turret of USHITORA-MON Gate
太鼓門: TAIKO (Drum) MON Gate
太鼓櫓: TAIKO (Drum) Turret
太鼓櫓と呼ばれる理由は、連絡用の太鼓を備えてあったからとのこと。

隠門: KAKURE (Hidden) MON Gate
筒井門から侵入する敵の背後から急襲(surprise attack on the rear of the enemy)するための門です。
筒井門: TSUTSUI-MON Gate
戸無門: TONASHI (Doorless) MON Gate
扉がついていないので戸無門です。元から扉がついていた形跡もないので敵を招き入れてから筒井門と隠門で襲うためとの見解もあるそうです。
お城とお庭はワンセット
しかしこの庭園は「二之丸」と呼ばれるだけあり、もともとは防御を主な目的とした城の一部でした。
現在は御殿などの遺構は残っていないものの、建物跡に新たな現代風の庭園として利用されています。
「わび」「さび」は英語で?
二之丸の中にも庭園はもともと作られていて、当時の戦国期の人々の「ものあはれ」を愛でる思いが伝わってきます。
短いですが「わび・さび」の英訳が載っていたので紹介します。
わび / taste for the simple and quiet
さび / elegant simplicity
「わび・さび」の英訳はいろいろ見ますが simple は外せないポイントかもしれません。
「decorate 飾り立てる」美の印象が強い西洋・中国とはまた違った趣がありますね。
松山城 英語版・日本語版のパンフレット
松山城 英訳と和訳の説明・解説
松山城: Matsuyama Castle
別名「金亀城」や「勝山城」とも呼ばれています。また姫路城、和歌山城と並んで、三大連立式平山城のひとつとなっています。
しゃちほこ: Two fabulous dolphin-like fish
「天守の上にのっているあれはなに?」と聞かれたときにする多少無理やりな説明のようですが、日本語の「鯱 しゃち Killer Whale」ほどの威厳は感じにくいですね。
ちなみに「あ」のしゃちは「天丸」、「うん」のしゃちは「まつ姫」とそれぞれに公募による愛称がつけられ、お城の住民票も交付されているとのことです。
本丸: Main Bailey
bailey は城壁で囲まれた城の内部のことです。
本殿: Central Compound
compound は「化合物」も意味します。ここでは「複合施設」の意味ですね。
中庭: inner court
「宮廷の庭」の意味です。裁判所を court というのは、中世では貴族の宮廷で裁判が行われていたからです。
日本、中国共に「朝廷」のことを Imperial court といいますが、同様にヨーロッパでも政治の会議を宮殿の庭で行っていたことにちなみます。
巽櫓: TATSUMI (Southeast) Turret
南東は方角を十二支で表した「辰巳 たつみ」の方向で「巽」です。
鉄砲狭間: gun turret
turret は「銃座」の意味もあります。
徳川幕府: Tokugawa Shogunate
親藩: relative fief of the Tokugawa Shogunate
明治維新: Meiji Restoration
「restore 元に戻す」が使われているのは政権が将軍家から天皇家へと奉還されたからです。
家紋: Family Crest
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