金峯山寺 Kimpusen-ji Temple
奈良吉野の世界遺産・金峯山寺へご本尊である蔵王権現さんの特別開帳の時期に行って参りました。
吉野は桜のお花見で有名なところですが、奈良平安のころから天皇や貴族とゆかりがあるところです。
鎌倉から室町にかけては後醍醐天皇の系統の南朝(Southern Dynasty)があり、教科書に載っている流れとは別の流れの歴史を深く感じることができる場所でもあります。
同時に修験道の聖地としても有名です。修験道は山岳信仰や神道、仏教、道教などがまじりあった日本独自の信仰です。そしてご本尊である蔵王権現さんは唯一の日本独自の仏様であり、今回特別開帳ということで拝見させていただいております。
ブログの最後に金峯山寺さんについての英訳と説明をのせています。
修験道とは? What is Shugen-do
この金峯山寺さんは修験道という日本独自の山岳信仰(Mountain Worship)の中心地のひとつです。
そのため、当時の都のあった奈良や平安にある寺院とはまったく違った空気を山全体が持っています。
日本の歴史教育では仏教はそれなりに学習するのですが、修験道はというと日本史では「おまけ扱い」といえるほど軽い扱いです。
修験道は日本古来の自然を敬う信仰や外来の信仰などが混ざってできた日本お得意の「ハイブリッド信仰」です。
こういう日本的なものの象徴と言える信仰をしっかりと歴史で学ぶべきです。
日本のことをないがしろにして「グローバル」や「英語」にこだわるというのは滑稽ですね。
日本的多様性 Japanese-specific Diversity
いろんな人種や国籍の人が好き勝手に自己主張する「多様性」とは大きく異なり、いろんな思想・信仰がグレーゾーンで調和するのが「日本的多様性」です。
いわゆる「リベラル」のひとたちの主張する多様性は「食材はとりあえずなんでも入れればいい!闇鍋サイコー!」に思えて仕方がありません。
日本料理は様々な食材から出汁をとって、バランスのとれた味に仕上げます。
日本古来の信仰も文化もこのような「和を以て貴しとする多様性」です。
「日本的多様性」を尊重する心を失うなら、ますます「自分の頭の中だけでうまくいくことを他人に押し付ける」ような発想が増えることになるでしょう。
そしてそのような思想の末路は「暴力革命(正義の味方である我々のいうことがわからないなら、無理やりわからせる)」になることは歴史上の自明の理(self evident truth)です。
修験道こそ多様性の証 Shugen-do represents diversity
話がすこしそれましたが、肝心の「日本的多様性」の代表である修験道の説明にはいります。
日本人はもともと山を神の住むところとして信仰していました。
そこに神道、密教(神秘主義的なヒンドゥー教の影響を受けた仏教)や道教など中国からいろいろな信仰が入ってきます。
それらがまとまってできたのが修験道だといわれています。
大いなる自然に入ることで自然のパワーを取り入れるため、そこに神道、仏教、道教的な儀礼や祈祷などを駆使する。
本質的なものを大切にし、それを活かすため様々な方法をつかう。
日本文明の軸は「和魂〇才」であり、修験道はそれをつよく感じさせてくれるように思います。
日本独自の仏様、蔵王権現 Zao Gongen Is Japanese
この修験道の中心となる蔵王権現(ざおうごんげん)さまは青い色をした仏様です。
お釈迦様やほかの仏様と違いインドご出身ではなく、日本独自の仏さまです。
権現というの「仮の姿で現れた」の意味です。
一番有名なのは「東照大権現」である徳川家康でしょうか。
日本を治めるために人間の姿で現れた神という意味です。
肝心のご本尊の仏像はというと、圧倒的な迫力です。
一年に一回の特別御開帳で拝見させていただけるのですが、特別に靴をお堂の中に持ち込むためのエコバッグと木札まで頂きました。
もちろん英語版のパンフレットまでもらってなかなか得した気分です。
もちろん「蔵王堂」と書かれた御朱印も頂いています。
多様性から一神教へ "Shinto fundamentalism"
現代では修験道というものはあまり耳にしないかもしれません。
修験道が衰退した大きな理由は、明治維新のときの修験道禁止令によるものです。
神道を純粋に日本独自のものにするために外来のものを排斥して
当時は一神教であるキリスト教文明の欧米が世界を席巻していました。
明治政府もそれに対抗するために神道を天皇中心の「一神教」へと無理やり作り替えます。
いわゆる「国家神道」とよばれるものです。
そして近代日本も欧米と同じく「己の正義」のために、自分と相いれない人々を暴力で押さえつけるような思想に振り回されることになります。
しかし日本は欧米と違って、骨の髄から「一神教」ではありません。
調和を軸とすることのできる文明です。
修験道について深く学んでいくと、日本人の生き方や日本文明のあり方を問い直すきっかけになるはずです。
金峯山寺 英語版・日本語版のパンフレット
金峯山寺 英訳と和訳の説明・解説
修験道: Shugendo
修験道は日本独自のものですので、みんなでこのままの英訳を定着させましょう。
役行者: En-no-Gyoja
伝説的な人物なのですが、日本中いろいろなところでたくさん祀られています。私の勝手な感覚ですが、寺院巡りで出会う確率は聖徳太子や空海さんに次ぐレベルですね。あとは山岳寺院では慈覚大師円仁さんぐらいがビッグネームでしょうか。
金峯山修験本宗総本山: the head temple of Kimpusen Shugen Honshu sect
蔵王権現:: Zao Gongen
蔵王権現さまは「釈迦如来」「観音菩薩」「弥勒菩薩」の合わさったものとされています。お釈迦様は「過去」、観音様は「現在」、弥勒様は「未来」において人々を救う仏様です。その三尊の力を合わせ、時を越えて人々を救うということです。
釈迦如来: Shakamuni Buddha
千手観音: Avalokitesvara (One Thousand handed Kwan In)
弥勒菩薩: Maitreya
マイトレーヤはサンスクリット発音ですね。遠い未来に人々を救うために修行をいらっしゃる仏様です。
山伏 / 修験者: monks of Shugendo
monk は禁欲主義の修道僧という意味です。
蔵王堂: zao-hall / zao-do
東大寺大仏殿に次いで日本で2番目に大きい木造建築物とのこと。お堂の中におられる蔵王権現さんの像もとてつもない迫力です。
道教: Taoism
日本で道教というとなじみがないのですが、安倍晴明で有名な陰陽道が道教の要素をよく含んでいます。陰陽は yin yang と発音しますが、これも英語で light and darkness のように「表裏一体」の表現として使われます。
あとは「風水」の feng sui も英語になっていますね。
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