英語にはアラビア語が由来の英単語が数多くあります。
アルカリ、アルコール、カフェ、キャンディといった日本語でなじみのある単語も実はアラビア語由来です。
さらにあたりまえのように世界でつかわれている 012345 といった「数字」も「アラビア数字 Arabic numerals」もしくは「Indo-Arabic numerals」とよばれています。
これにはちゃんと理由があります。
それはイスラム文化がヨーロッパ、そして全世界に大きな影響を与えたからです。
近現代の始まりは14~15世紀にヨーロッパでうまれたルネサンスとされています。
しかし、ルネサンスに先駆けて8~13世紀ほどにかけてイスラム黄金期(Islamic Golden Age)といって科学が急速に進歩した時期があります。
イスラム教と科学に対する姿勢は当時のキリスト教徒や中国人が到底追いつけないような進歩的なものでした。
「この世界は Allah が創造されたのだから、世界のありのままの姿を探求することが Allah の知恵により近づくことになる」
ちなみに Allah とは「世界の創造者である絶対神」を表すアラビア語です。
英語であれば God になります。ラテン語なら Deus(デウス) となり、ヘブライ語なら YHWH(ヤハウェ)です。
このような万物の真理を追い求める姿勢から、イスラム圏では科学(化学や数学、医学、天文学など)が大きく進歩しました。
それと同時にアラブ人を中心とした遊牧民特有の強力な騎馬戦闘力を持ち、イスラムという一神教により民族間の差別をなくし、ひとつにまとまったイスラム教徒は圧倒的なスピードで西はスペイン、東はインドと広大な領域を支配します。
そして当時のイスラム圏は「黄金期 the Golden Age」の文字通り世界最強の軍事力、世界最大の支配領域、世界最高の知識・技術を有する文明となりました。
これほどに大きな影響を世界史に与えたイスラム文化を日本人が軽視しているのはなぜなのでしょうか?
それは、明治時代に欧米人の受け売りでつくった世界史の教科書を学んでいるからにほかなりません。
現代の欧米文化圏は過去の白人の横暴さを恥じる方も多くいらっしゃいますが、明治のころは人種差別や暴力による搾取を悪いと思うことすら失笑を買ったでしょう。
その時代の歴史のまま日本はずっと受験勉強を続けています。
それゆえ学校や受験での英語へのイスラム文化の影響についての言及も少なくなります。
しかし、実際には欧米文化圏では近代哲学や科学の発展にイスラムの影響がありました。
とくに論理性や科学の知識などを、キリスト教からヨーロッパを解き放つのに大きなきっかけになっていることは否定しようがありません。
話はすこしはずれますが、欧米文化圏の論理性の発展について興味のある方はこちらもどうぞ。
なぜ英語は論理的な言葉なのか?(英語うんちく No.017)
白人優位主義だった時代の欧米人の受け売りで世界史を学び、歴史の事実からブレている英語学習をしていたら、日本人の英語が世界で通用しないのは当たり前です。
それでは、イスラム文化がどれほど英語にも影響を与えているかを見るために、アラビア語源の英単語を見ていきましょう。
化学系のアラビア語源の英単語
化学は物質の本当の性質を探求する学問です。
化学反応も Allah が創造した世界の中での不変の法則に従って行われています。
そして、それを知ることは Allah の知恵に近づき、我々が生かされていることに感謝することにつながります。
このような情熱に動かされてイスラム教徒は化学への探求を深めます。
alchemy: 錬金術
錫(tin)や鉛(lead)などの卑金属(base metal)を金や銀などの貴金属(precious metal)に変える試みのことです。もちろん当時の技術では当然不可能なことでしたが、このように様々な物質の性質を調べるうちに化学が発展していきます。
alcohol: アルコール
al はアラビア語の定冠詞です。英語で言うところの the になります。アルコールはアイライナーをつくるのに使われていたため、化粧の粉である「fine powder さらさらの粉」を意味する言葉が語源です。
ちなみにアルコールを分解してできるアルデヒド(aldehyde)は alcohol dehydrogenatus というラテン語の短縮形から命名されました。
alkali: アルカリ
「植物の灰」からアルカリ成分を抽出していたことから、「灰」を意味する「al-qaly」に由来します。
アルカリ性は英語で「base」で形容詞は「basic」といいます。
amalgamate: 合同する、混交する、水銀と化合させてアマルガムにする
イスラム圏から独立後のスペインは植民地支配をしていた中南米の金鉱山(gold mine)や銀鉱山(silver mine)からアマルガム法という方法で非常に効率よく金や銀を鉱石(ore)から抽出していました。
これに目を付けたのが徳川家康で、カトリックの布教と交換条件にアマルガム法の知識を得ることを提案しますが、スペインから製法は伝授されませんでした。結局のところスペインの目的は、布教を先兵とした日本の支配と、キリスト教化した日本兵をつかった中国侵略だったので、最終的に家康はキリスト教(とくにカトリック)を禁止します。
ちなみにスペインが最大勢力を誇った時代は、日本では戦国時代にあたり、日本からも石見銀山から大量の銀がヨーロッパに流入していました。
日本産の銀のヨーロッパへの流入の影響などを詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
benzine: ベンジン
ガソリンなど燃料に使われる可燃性の液体の総称です。有害物質の benzene(ベンゼン) とは別物なので注意です。
chemistry: 化学
錬金術 alchemy から生まれた言葉です。ちなみに「科学」を意味する science は「知る」という意味のラテン語が語源です。
elixir: エリクサー
錬金術の用語で「卑金属を金に変えるもの」です。英語では「賢者の石 philosopher's stone」とも呼ばれています。これは化学の正式用語ではないですが、エリクサーを探求する過程で様々な試行錯誤が繰り返され、その結果、化学が発展します。
K:カリウムの元素記号
カリウムは「植物の灰」という意味の言葉から来ています。同じ「灰」を意味するアルカリの「kali」と同じ語源です。
実は英語でカリウムは potassium といいます。カリウムを抽出するのに pot(入れ物)に ash(植物の灰)を入れて実験を行ったことに由来するようです。
soda: ソーダ
炭酸飲料のソーダではなく「ナトリウム化合物」のことです。
ナトリウムは英語では sodium といいます。ソーダ(soda)が語源です。
炭酸飲料としてのソーダは最初の炭酸水(carbonated water)がレモネードに重曹(炭酸水素ナトリウム sodium hydrogen carbonate)を加えた物とされることに由来します。
数学系のアラビア語源の英単語
数学がイスラム圏で発展したのにも理由があります。
当時の学問の世界はいまほど交流は盛んではないですし、高度な学問を世界で共同研究するというのも非常に困難でした。
しかし、イスラム教徒がギリシャとインドを支配化に置いたことで話が変わってきます。
図形を扱う幾何学(geometry)はギリシャで発展し、インドではゼロや無限を扱う数学が発展していました。
これらをイスラム教徒は融合することができたのです。
これによって現在、我々が恩恵を被っている数学の下地が出来上がります。
algebra:代数
アラビア語で「バラバラのパーツの統合」という意味です。イスラムが勢力をヨーロッパやアジアにひろげたことで、インドの数学とギリシャの幾何学(geometry)を融合させてうまれた数学の分野です。これにより関数(function)や図形の方程式(equation)などが扱えるようになりました。
日本語の「代数」とは X や Y など「数字の代わり」に文字をつかって数を扱うことからうまれた言葉です。
algorithm:アルゴリズム
人工知能の進歩で一躍有名になった言葉ですが、語源は古く9世紀のイスラム学者アル・フワーリズミー(Muhammad ibn Mūsā al-Khwārizmī)の名前にちなみます。この世界史に名を刻む偉大な学者が algebra の語源となる「代数学の書物」の著者でもあります。
ちなみに Kh は「フ」と「ク」を合わせたような音だとおもいます。「フビライ・ハーン」も「クビライ・カーン」と英語では発音されているような気がします。おそらく中央アジアでは一般的な発音なのでしょう。
average:平均
もともとアラビア語では「損傷、不良品」の意味でした。その後、海洋貿易が発展するに従い意味が変化していきます。暴風雨などから船の安全を確保する際に、輸送品を一部、船外へ破棄したとしても、積み荷の所有者に関係なく「損害は平均的に算出する」という契約があったことから「損害」から「平均」の意味が生まれました。
zero:ゼロ
アラビア語の sifr がラテン語に取り入れられました。ゼロを文字としてあらわしたのはインドが初めてです。存在しない「無」を文字であえて表すというのは、さすが「諸法無我」の母国インドです。
イスラムがインドまで勢力を広めたことでゼロを扱う数学が世界標準となりました。
ただ、文字としては残っていないもののメソポタミアなどでは粘土板にゼロを「空白」として記しており、「無」の概念としてはインド以外でも存在したようです。
ちなみにゼロを扱うということは「無限 ∞ infinity」を扱うことと同義になります。
100 ÷ 100 = 1
100 ÷ 10 = 10
100 ÷ 1 = 100
100 ÷ 0.1 = 1000
100 ÷ 0.01 = 10000
このように割る数を減らすと、数が大きくなっていきます。
そして割る数をどんどん減らしてゼロにすると・・・
100 ÷ 0 = ∞
このようにインドでは「無、ゼロ」と「無限、インフィニティ」のような非現実的な概念をヒンドゥー教や仏教の中心であるウパニシャッド哲学の中で発展させていました。そしてそれが人類の数学の発展に大きく寄与しています。
cipher:ゼロ、0、アラビア数字、暗号
ゼロと同様にアラビア語の sifr が語源です。また「解読する」という意味で decipher という語もあります。
天文・方位系のアラビア語源の英単語
イスラム教徒は絶対神 Allah を信仰し、偶像崇拝(idol worship)を禁止しています。
そのためインドやローマ、中国、日本のように仏像や神像を造らない代わりに、決まった時間に聖地メッカ(Mecca)への礼拝をします。
イスラム教が急速に勢力を広げていくと、スペインからインドまでイスラム教徒の居住区は世界でバラバラになります。
そうなると、たとえどこに住んでいても、遠く離れた土地からメッカの位置を正確に知り、 何時にどの方向に礼拝すればよいのか知る必要があります。
そこで、時間、季節、地理、暦を正確に理解するために天文学(astronomy)や方位(cardinal direction)の研究が一気に発展しました。ちなみに astrology は占星術です。
Aldebaran:アルデバラン
牡牛座(Taurus)の星です。意味は「the Follower of the Pleiades(プレアデス星団に続くもの)」が語源です。日本語でも「後星 あとぼし」というようです。
Algol: アルゴル
ペルセウス座(Perseus)の星です。アラブ世界ではグール(人間を食べる魔物)がいると信じられており、「head of ghoul(グールの頭)」を意味する「ra's al-ghūl ラーズ・アル・グール」が名の由来です。
ちなみにアメリカンコミックのバットマンにはラーズ・アル・グールは敵キャラとして登場します。
Altair:アルタイル
わし座(Aquila)の星です。「the Flying Eagle (翔んでいる鷲)」を意味する言葉が語源です。また夏の大三角(Summer Triangle)の一つでもあり、日本の七夕では「ひこぼし(彦星)」と呼ばれています。
Baten Kaitos:バテン・カイトス
くじら座(Cetus)の星です。由来は「Belly of the Sea Monster(海の怪物の腹)」という意味です。「海の怪物」のことを日本語で「クジラ」と呼んでいます。
Betelgeuse:ベテルギウス
オリオン座(Orion)の星です。歴史的には「Armpit of the Central One(中央のものの脇)」と訳されているようですが、ラテン語に間違って書き写されたことが要因みたいです。正確な訳は諸説ありますが、もっとも有力なのが「Hand/Armpit of Orion(オリオンの腕/脇)」という意味のようです。オリオンはアラビア語だと「Al Jabber(巨人)」という意味ですが、これが「Al Jauza(中央のもの)」と誤訳されたのが今に至っているようです。現時点での英語のWikipedia の内容を受けているので、今後修正される可能性はあります。 この Alまた冬の大三角(Winter Triangle)のひとつでもあります。
Deneb:デネブ
白鳥座(Cygnus)の星です。由来は「Tail of the Hen(めんどりの尾)」を意味する言葉です。夏の大三角の一つでもあります。
Fomalhaut:フォーマルハウト
みなみのうお座(Pisces Austrinus)の星です。由来は「Mouth of the Whale 大きな魚(くじら)の口」を意味する言葉です。ちなみに中国語では「北落師門」といいます。
Rasalgethi:ラスアルゲティ
ヘラクレス座(Hercules)の星です。意味は「Head of the Kneeler(ひざまずく者の頭)」を意味する言葉に由来します。
Rigel:リゲル
オリオン座(Orion)の星です。意味は「Foot of Orion(オリオンの足)」という意味です。同じオリオン座なので、ベテルギウスの語源と同じく「Al Jauzah」と「Al Jabber」の誤訳の影響を受けています。
Vega:ベガ
琴座(Lyra)の星です。由来は「the Falling Eagle/Vulture(降下するワシ/ハゲワシ)」をあらわす言葉になります。また夏の大三角の一つであり、日本では七夕の「おりひめ(織姫)」 と呼ばれています。
azimuth:方位角、方位
zenith:天頂
アラビア語で「頭上の方向」を意味します。
nadir:天底
アラビア語で「反対」を意味する言葉です。
その他のアラビア語源の英単語
amber:琥珀(こはく)
admiral: (海軍の)提督
adobe:日干し煉瓦(れんが)
alcove:(壁などの)入りこみ、凹となっている所、床の間
apricot: アプリコット
arsenal: 武器
本来は「工場」の意味ですが、そこから「船のドック Ship Dock」そして「海軍の武器」に転じました。
イスラムは遊牧系というイメージが強いですが、オスマントルコの海軍はめちゃくちゃ強いです。スペインがアラビア半島からイスラム勢力を追い出したあとも、地中海における優位性は依然としてオスマントルコがもっていました。この情勢が変わるのがレパントの海戦(1571)です。
assassin:暗殺者
麻薬の一種である「ハッシシ」を使用したことに由来します。
hashish:ハッシシ
乾燥した薬草(dried herb)がもともとの意味です。
azure:蒼
中東で産出する青く美しい鉱石「ラピスラズリ lapis lazuli」が由来です。lapis はラテン語で「石」ですが、lazuli はアラビア語由来の名前です。
café:カフェ
caravan:キャラバン
アラブ人はシルクロードの砂漠で行商を行っていたので、そのパーティ一行をあらわす言葉です。
candy:キャンディ
chess:チェス
将棋の王手にあたる「check」 も、詰みにあたる「checkmate」もアラビア語が語源です。
coffee:コーヒー
もともとアラビア語では「空腹を抑えるもの」という意味のワインの一種をあらわす言葉でした。カフェインもアルコールも覚醒作用があるので似たものとされたようです。
cotton:木綿
crimson: 真紅
アラビア語で「赤」を意味する言葉が語源です。
damask: ダマスク織、紋どんす
シリアの首都であるダマスカスに由来します。
gazelle:ガゼル
アフリカにすむシカの仲間です。
giraffe:キリン
アラビア語で「速く歩くもの」という意味です。
harem:ハーレム
イスラム社会における女性だけが出入りできる居住場所のことです。ちょうど中国の後宮や江戸幕府の大奥と似たものになります。
セイウチやアザラシの群れのことをハーレムといいますが、一夫多妻の群れをあらわす生物学の用語にもなっています。
jar:水差し
jasmine ジャスミン
シリアの「市の花」やパキスタンでは「国花」となっています。
jinn:ジン
アラジンと魔法のランプにでてくる魔人のことです。女性形はジーニーです。
lemon:レモン
lime:ライム
柑橘類のライムのことです。石灰も英語では lime といいますが、こちらはゲルマン語が語源です。
magazine: 倉庫、雑誌、弾倉
雑誌は「知識の倉庫」そして、銃弾を込めてあるマガジン(弾倉)も「銃弾の倉庫」という意味になります。
mattress:マットレス
monsoon:モンスーン
mummy:ミイラ
エジプトはイスラムが生まれてすぐに勢力下におかれました。
orange:オレンジ
レモン、ライムとおなじく柑橘類です。
safari:サファリ
アフリカ北部は長らくイスラムの勢力圏となります。
saffron:サフラン
sash:サッシュ(リボン)
sherbet:シャーベット
sofa:ソファ
sofa はイギリス英語で、アメリカなどでは couch と呼ばれます。
spinach:ほうれん草
syrup:シロップ
tare:風袋
tariff:関税
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Sugar (土曜日, 11 1月 2020 17:27)
はじめまして。私は今、高校2年のものです。今日、「英語でカツオはなんて言うんだろう」と思い調べていたところ、英語のツナは「マグロ」意外にも意味がある、という記事を見つけ、このサイトを知りました。読んでいてとても興味深かったので他の記事も見ていたところ、この記事にたどり着きました。私は高校の教科の中で英語が1番好きで、特にクジラの公式や単語の語源などに興味があります。そこで2つ質問があります。一つ目が、大学で何を学ばれて、英単語の語源等に詳しくなられたのですか。また、英語と共に世界の歴史や宗教についてもとても詳しいように感じましたが、こちらも大学で学ばれたのですか。その場合、専攻は英語と世界史の両方ということでしょうか。お忙しいとは思いますが、回答よろしくお願いします。
あるま・まーた (土曜日, 11 1月 2020 23:16)
Sugar さん
コメントありがとうございます。僕のブログ読んでもらえてうれしいです。
まず私が「クジラの公式」というものを知らずお恥ずかしいかぎり・・・。受験ではこういう言い方をするんですね!一つ勉強になりました。比較表現は全般的に日本語の意味や文構造と相性が良くないですね。和訳の丸暗記だと英語の語順でよめないですし、リスニングも非常に苦労すると思います。さらにニュアンス表現も多々あり、文字通りでは意味がずれて解釈してしまう可能性のものも多いです。教えるほうも苦労します。
と、それはさておき、私の話ですが、実は私は高校は半年で中退していて、そのあと日本の大学受験をしましたが、途中でやめてアメリカに留学しています。
ちょうど予備校にいるときにお医者さんになるために日本で医学部の受験勉強をされていた方と出会ったのが転機です。その方はアメリカでMBAをとってアメリカの証券会社で働いた経歴のあるかたで、その方から世界の動きや経済や投資の話を聞いているうちに、おもしろくなってアメリカに留学することにしました。
私のアメリカでの専攻は Business Administration (経営学)です。このときは経営学と経済学の違いすらわからず、経済を知らないと世界の動きすら見えないとおもって大学で専攻しました。経済を学ぶつもりで経営を選んでしまったんですけどね。。。。いまは会社をつくって、田舎のプロモーションも社会人の生徒さんとやったりしているので、経営の基礎知識はすごく役に立っています。間違ってよかったと思います。
世界史の流れがそれなりに入っているのは、最初、日本史で受験するつもりだったのですが、予備校の日本史の講師が横暴な態度を露骨に出す人で、僕は無意味に偉そうな人には反抗してしまうので日本史から世界史に変えたおかげです。日本史は大好きです。NHKの歴史番組はかなり見ています。
アメリカで英語ができるようになってくると、世界史の知識は非常に役立ちました。アメリカは世界中から留学生が来るので、基本、誰と話してもネタがありました。「なんで俺の国の歴史をそんなに知っているんだ!?」と驚かれました。宗教や信仰関係を除けば、特に大したことは言ってないつもりです。もちろん、まず日本語で勉強したので、英語で学びなおす必要はありました。例外は中国、台湾で英語がなかなか通じない人も多いです。でも発音がわからなくても漢字で「曹操」「乾隆帝」「鄧小平」とか、かけば「おお!」とわかってくれます。漢字は超絶便利です。ちなみに三国志の主要人物であれば、三国無双シリーズの英語版は4からずっとやってるので、なんとなく英語っぽい発音ならできます。こういう練習もしてますね。
歴史で込み入った話をしていくと、どんどん歴史や信仰の話に深入りしていきます。そうなってくると日本人の感覚とずれた意見もたくさん出会います。そういった「頑固」な意見は宗教や民族のプライドに起因するようなものが多いです。ですので意見がまとまらなくても「なんて思い込みが強いんだ?!」と思うより、どんな信仰や文化、民族性、歴史をもつのかな?とまず調査するようになりました。ぼくの勝手な視点から議論に決着をつけるよりも、なぜその議論が起こっているのか?の分析をするようになったのです。
そうやって歴史の流れを見ていくと、当然、強い国の制度や影響力の強い信仰・思想などは国を超えて広がります。そういったものは当然、言語に必ず足跡が残ります。だって「宗教」とか「貿易」って目に見えるものではないですよね?「言語」でしか伝わらないものです。アラビア数字(0123・・) はローマ数字(ⅠⅡⅤⅩ など)より便利でした。だから残るんです。そういった言葉の影響や変化が語源にも見えてきます。日本の戦国時代のキリシタン用語にもポルトガル語やスペイン語がかなり入っています。
私が語源に詳しいというよりは、自分が勉強すると決めた内容、この記事であれば「アラビア語源の英単語」とテーマを絞り、イスラム関連の書物をいくつか図書館で借りて、WIKIなどネット系は徹底的に英語で読み込んでいます。そうやって日本語と英語の情報の整合性を確認しながら、コツコツやってます。知っていることを書くよりも、書きながら自分の勉強をしている感じです。ちなみに、この記事はBBCのドキュメンタリーでイスラム黄金期についてやっていたので、そこから学んだことなども紹介しています。
すいません、長くなりました。まあこんな感じで英語の塾やってます。
Sugar (水曜日, 15 1月 2020 17:31)
返信ありがとうございます。あるま・まーたさんが教師に反抗して日本史から世界史に変更された話は面白かったです。私はA科目で世界史をやっているのですが、B科目は地理なので、世界史ではこんなにも沢山のことを学ぶのかと驚きました。最近、地理の授業で過去問を解いていて良い点数が取れなかったのと、選択科目を選ぶときに世界史と地理で迷ったので、世界史の方が自分は向いていたんじゃないのかなと少し後悔していたところでした。それに、将来私もアメリカ留学をしたいと考えいるので、留学で世界史の知識が留学で役立ったという話はとても参考になりました。今から世界史にすることは厳しいと思うので、少しでも世界史の知識をつけたいなと思いました。
また、あるま・まーたさんは、たくさんの書物を読まれ深い知識を得られたんですね。私が何かを調べようと思った時は、インターネットという選択肢しか頭にありませんでした。今度からは、本を読むことでインターネットで得た知識が確かなのか、そしてより深い知識を得たいなと思いました。
色々と参考になることばかりで、世界史や英語の勉強のやる気が出てきました。今後もこのサイトを拝見させて頂こうと思います。本当にご返信ありがとうございました。今後の活動を応援しています。
あるま・まーた (木曜日, 16 1月 2020 12:37)
Sugar さん
受験科目の選定はなやみますよね。ですが心配しないでください。
歴史を勉強していると出来事に視点が移ります。しかし実際にその土地でどんなことが行われるかは風土や地形、など地理的条件に左右されます。砂漠で農業はできませんし、密林で遊牧はできません。そういう意味で歴史を深く学んだとき、地理はかならず役に立ちます。
私は日本中をいろいろ旅していますが、山の中で海の神様をまつった神社は非常に珍しいと思いです。でも海岸は違います。わが町神戸には「海神社」があります。人間の生き方と地理的条件は切り離せません。地理が役に立つレベルまで歴史の理解を鍛えてください。歴史は人間の行動の蓄積です。いまは闇雲に勉強しているように見えても、かならずあらゆる知識が歴史の流れに統合されてきますので、そこまで我慢ですね。
留学をするのであれば、絶対に世界史の知識はあったほうがいいですね。独学をするのであれば「日本史or世界史」という分け方より、ヨーロッパ(ギリシャ、古代ローマ、ヨーロッパ)と中東(アラブ・トルコ)、インド、中国、日本でテーマを絞るとよいと思います。
帝国(強い国の制度)と思想・宗教(国・民族を超えて人々をまとめる)は地理的制約を超えるものです。教科書の分け方よりも地理で分けて、その地域の影響の強い国や民族の制度や宗教で歴史の流れを追っていくことで、一つ流れが見えてきます。
中国を学ぶことは漢字文化圏への儒教・道教・仏教の影響を学ぶことにつながります。インドは周辺へ勢力拡大する帝国的な運営はなかったですが、仏教(ウパニシャッド哲学)という強大な世界宗教を生んでいます。ヨーロッパはギリシャ哲学、キリスト教、ローマ帝国、ルネサンス以降の近代の歴史を学ぶことでつながります。もちろんこのブログでも書いたようにイスラムも忘れてはいけませんし。
こういった勉強は独学が一番効果的です。与えられたものではなく自分でテーマを絞ることで、自分が納得するまで、自分の頭の中に全体を俯瞰するシステムが出来上がるまで独学をするとよいと思います。その際に絶対に英語は重要です。テストの点数で測る英語力ではなく、世界の歴史を英語で独学する能力です。
私の感覚だと中国、日本(道教、儒教、神道)は日本語で学べます。しかしインド(仏教)になってくると、英語も混ぜたほうが良いと感じています。なぜならインドは英語の資料が超充実しているのと、仏教はヒンズーの影響があるので、古代インドの言葉がサンスクリット語であり、その語源を調べないと漢語訳では見えてこない時があるからです。
もちろんいきなり英語だけの独学はしんどいので、日本語の資料(ネット&書籍)と並行でやっていくとよいと思います。
またなにかあったら質問してください。直接メールいただいても結構ですし。これもご縁ですので、今後もなにかお力になれれば幸いと思います。
Sugar (日曜日, 19 1月 2020 03:11)
返信ありがとうございます。
歴史をたくさん学んだ先に地理が生きてくるのですね。そうなるまで少しずつでも歴史を学んでいきたいと思います。あと、英語で歴史を学ぶのは大変難しそうですが、そうする事で英語の資料も見ることができ、より広い視点で歴史を学ぶことができそうな気がしました。英語は好きなので、これからもどんどん伸ばしていきたいと思います。
何か気になることがあった時には、また質問したいと思います。色々とありがとうございました。
phd (水曜日, 23 9月 2020)
こんにちは。人文学の研究をしている者です。たまたまこのブログにたどり着いたのですが、いくらか不正確な内容がありますので、目についたところだけ指摘させていただきます。
>ちなみに「科学」を意味する science は「知る」という意味のギリシャ語が語源です。
scienceの語源はラテン語のscire「知る」です。古典ギリシア語の「知る」はγιγνώσκω(gignosko)ですからscienceとは関係ありません。ちなみにこのγιγνώσκωは英語のknowやドイツ語のkennenなどと形が似ていますが(有名なグリムの法則を考慮していただければ、古い語のgの音が新しい語のkの音と対応するのはわかるかと思います)、印欧祖語の同じ単語に由来すると言われます。
>ちなみに Kh は「フ」と「ク」を合わせたような音だとおもいます。「フビライ・ハーン」も「クビライ・カーン」と英語では発音されているような気がします。おそらく中央アジアでは一般的な発音なのでしょう。
khと表されているのはخというアラビア文字の発音で、無声軟口蓋摩擦音と言います。喉の奥から「ハー」と発して鳴らす音です。この音は中央アジアの言語に限らず、ドイツ語のch、ロシア語のХなどのようにヨーロッパ言語にもよくみられます。
>歴史的には「Armpit of the Central One(中央のものの脇)」と訳されているようですが、ラテン語に間違って書き写されたもののようです。正確な訳は諸説ありますが、もっとも有力なのが「the Hand of Al Jauzah (ジャウザの手)」という解釈です。ジャウザというのは人名のようです。また冬の大三角(Winter Triangle)のひとつでもあります。
アラビア語のجَوْز(jauza)はcenterの意味です。ベテルギウスの語源とされる إِبْط الجَوْزَاء(ibt al jazah)は、إِبْط(ibt)が「脇の下」の意ですから「Armpit of the Central One」と訳して間違いではありません。
最後に感想です。確かに日本人の学ぶ世界史は、「ヨーロッパ史を中心とした西洋史」と「中国史を中心とした東洋史」のつぎはぎが核になっており、ここには日本のアカデミズムにおける歴史研究の問題点が現れているとは思いますが、それを「欧米人の受け売り」と言うのは情報のほとんどない中で必死に研究をしてきた先人たちを低く見過ぎだと思います。
また、本稿においては、「論理性や科学の知識」をもってヨーロッパの近代哲学や科学の発展に貢献し、世界に影響を与えたという観点からイスラームの重要性を論じておられますが、これこそまさに西洋中心の視点から描かれた歴史におけるイスラームの重要性でしかないと思うのですがいかがでしょうか。
あるま・まーた (水曜日, 23 9月 2020 23:31)
phd さん
コメントと訂正ありがとうございます。
こちらもいろいろ調べながらやっているのですが、訳が分からなくなることもあり校正ができていない部分もあり、こうやって研究者の方に訂正いただけると非常に助かります。
まず、ここで感謝を述べさせていただきます。
不適切事項につきましては、本文修正いたしました。
また「Kh」の発音についても勉強になりました。私は英語と日本語の発音しか実際に聞いたことがなかったので、知識が限定されておりました。ありがとうございました。
それでは「ベテルギウス」について質問させていただきます。
>アラビア語のجَوْز(jauza)はcenterの意味です。ベテルギウスの語源とされる إِبْط الجَوْزَاء(ibt al jazah)は、إِبْط(ibt)が「脇の下」の意ですから「Armpit of the Central One」と訳して間違いではありません。
phdさんの「間違いではありません」という言い方が「必ずしも間違いとはいえない」なのか「正確である」のいずれに重きが置かれている判断つきかねますが、ご指摘の内容は踏まえたうえで、英語の wikipedia の Betelgeuse の記事を読んで本文は書きました。
Wikipedia には "Betelgeuse is often mistranslated as "armpit of the central one". というように書かれています。mistranslated は私の知る限り「誤訳」と解釈してよいものと思いますので。
該当カ所は以下になります(https://en.wikipedia.org/wiki/Betelgeuse)
ページ下部の "Etymology" のところです。少し長いですがコピペしました。
"Betelgeuse is often mistranslated as "armpit of the central one".[172] In his 1899 work Star-Names and Their Meanings, American amateur naturalist Richard Hinckley Allen stated the derivation was from the ابط الجوزاء Ibṭ al-Jauzah, which he claimed degenerated into a number of forms including Bed Elgueze, Beit Algueze, Bet El-gueze, Beteigeuze and more, to the forms Betelgeuse, Betelguese, Betelgueze and Betelgeux. The star was named Beldengeuze in the Alfonsine Tables,[173] and Italian Jesuit priest and astronomer Giovanni Battista Riccioli had called it Bectelgeuze or Bedalgeuze.[21]
Paul Kunitzsch, Professor of Arabic Studies at the University of Munich, refuted Allen's derivation and instead proposed that the full name is a corruption of the Arabic يد الجوزاء Yad al-Jauzā' meaning "the Hand of al-Jauzā'", i.e., Orion.[174] European mistransliteration into medieval Latin led to the first character y (ﻴ, with two dots underneath) being misread as a b (ﺒ, with only one dot underneath). During the Renaissance, the star's name was written as بيت الجوزاء Bait al-Jauzā' ("house of Orion") or بط الجوزاء Baţ al-Jauzā', incorrectly thought to mean "armpit of Orion" (a true translation of "armpit" would be ابط, transliterated as Ibţ). This led to the modern rendering as Betelgeuse.[175] Other writers have since accepted Kunitzsch's explanation.[132]
The last part of the name, "-elgeuse", comes from the Arabic الجوزاء al-Jauzā', a historical Arabic name of the constellation Orion, a feminine name in old Arabian legend, and of uncertain meaning. Because جوز j-w-z, the root of jauzā', means "middle", al-Jauzā' roughly means "the Central One". The modern Arabic name for Orion is الجبار al-Jabbār ("the Giant"), although the use of الجوزاء al-Jauzā' in the name of the star has continued.[175] The 17th-century English translator Edmund Chilmead gave it the name Ied Algeuze ("Orion's Hand"), from Christmannus.[21] Other Arabic names recorded include Al Yad al Yamnā ("the Right Hand"), Al Dhira ("the Arm"), and Al Mankib ("the Shoulder"), all appended to "of the giant",[21] as منكب الجوزاء Mankib al Jauzā'."
ただ私がこのブログを書いたときからWikiの記事に修正が加わっていることもあり、armpit of the central one" が最適訳なのであれば、英語の wiki を訂正いただけるとありがたいです。そうなるまでは、ブログ本文を "armpit of Orion" に訂正するつもりです。もちろん私は学術的判断ができませんのでが「英語の Wikipedia によると・・・」というお断りは当然、追記するつもりです。
最後にいただいた感想の件についてですが、貴重なご意見大変ありがとうございました。こちらの意図とは違う部分も多少はあるとは感じますが、私がブログとして公開している以上、評価の対象となり、多種多様な解釈が許されて当然だと思います。こちらとしては再度になりますが、ご感想をいただけたことだけでも多大な感謝をしている次第でございます。